製造者 原 高教

○四十の手習いならぬ六十の初体験(米麹)

卒業して早40年、「麹を作る」。
学生そして酒屋での修行時代を通して、一から麹を作るなんで初体験。
教科書を引っ張り出し、イザ! 「麹室」を作ろう。
約2週間かけ完成。 我ながら、上出来(自分を褒めてやりたい)
知らない人が見たら、「すごいね!!」だと思う。

米麹は、酒屋での修行を思い出しつつ、テレビで見た、杜氏さんの動きを思い出し
サア!作るぞ。
丁度その時は、昼間からの大雪、ドンドン積もって来ております。
夜中の突然、工房の天井からベキ、バキと大きな音が!
そして 水か降って来ました。大水です。
桶を持って大慌てで水受けに、掃除に寝てる暇はありません。
時間が来る、麹の手入れの時間が。
水か落ちてくる。麹の手入れ。
48時間後、出麹。
ムムム!香りは「いいね!」 麹菌の生え具合は「まあ、まあかな」
初めてにしては、「上手いじゃない」(独り言)
この経験に、味をしめたのが大きな失敗の始まりでした。
記念すべき「初米麹」、プロの酒屋に見てもらったら、メタメタ、けちょんけちょん、
最後に一言「初めてにしては、こんなもんじゃないの」
ポジティブな私!「こんなもんじゃないの」は、初めてにしては上出来と解釈。
酵素力価の高い良い麹を作る。私達の作る米麹は、アミラーゼ酵素力価の高い麹を作る必要があります。
白米麹、玄米麹、米糠麹と、麹の仕込みからから色々とためしてみました。
玄米麹は、玄米の浸漬時間、蒸し時間全てが初めての経験、米糠麹は蒸す事が
出来るのかさえ解らず初めました。全てが手探り状態でしたが、先人の知恵と
六十おじさんの経験と努力が澪結び、今ではそれは、それは立派な米麹が出来るようになりました。
と!思っております。

○四十の手習いならぬ六十の初体験(大豆麹)

米麹成功(自分でそう思っている)。
次は、大豆麹!
これが、これが難敵。
米麹は、酒屋の修行時代から先の大成功(自画自賛)と経験がありますが、大豆麹は全くの初めて。
学生時代の友人が、味噌用麹の研究をしていたのは知ってるし、友人が本当に美味しい
味噌・醤油家さん、友人が大手の味噌メーカーの就職した事(今工場長だって)、
大豆麹の知ってる限りの知識を振り絞りチャレンジ!
このチャレンジ精神が、大豆30kgをパーにする事になりました。
まず 手始めに大豆10kg水に一晩漬ける。大豆麹菌の説明書通りに!
翌日 ビックリ 水を吸った大豆が、桶から溢れんばかりに。
これが、失敗の始まりでした。

紆余曲折ありましたが、大豆麹仕込み完了。
麹室(別室)に入れ、翌日 「何だか納豆臭くない!」この一言が恐怖の幕あきでした。
「気のせいだよ」が、命取り。
翌々日 恐怖は現実となりました。「やっぱり 納豆臭いよ!」
「臭くない!」が、「臭いよ!」の現実に変わった瞬間です。
しかも 私の嫌いな納豆。
自称「大豆麹」は、「大豆納豆麹」となったのでありました。
友人に電話して事の経緯を説明。
優しい友人は、本当に優しく教えてくれました。持つべきは友。
しかし この失敗に懲りないのが、六十の爺。
次は少し減らして5kgにしよう。
今回は水漬けは順調、蒸、そして麹菌を散布するときなって、ハッタイ粉が
無い。「はったい粉」!今時の若造、「はったい粉」を知らない。
「はったい粉」ってなんです。
いま!「はったい粉」の説明をしている時間は無い。
私の浅はかな知恵は、グルグル回り「黄粉」でやろう!
大豆の麹だ、黄粉で代用OKだよ。自分に言い聞かせております。
付け焼刃で仕込んだ大豆麹。当然 上手く良く分けがありません。
「失敗は成功のもと」
「成せばなる何事も」
先人は、良いことを言ってるな。
その後、何回かの失敗を経験したのち、30kgの失敗を取り戻してもお釣りが来るくらいな、
プロテアーゼ酵素力価の高い「大豆麹」が作れるようになりました。

今度は、麦麹に挑戦してみようかな。
後ろで声が聞こえます。
「歳を考えろって!」
四十の手習いならぬ六十の初体験は、まだまだ続くのでありました。

トップページヘ戻る